REPORTレポート

代表植村の自伝的記憶

ウクライナの戦後復興プロジェクトに採択された宮田秀明教授の遺産

今回は嬉しいお知らせをしたいと思います。
 
国連工業開発機関(UNIDO)はウクライナの戦後復興を見据えた支援プロジェクトを進めています。日本とは、経済産業省の資金拠出をベースに、日本企業の技術移転によってウクライナでの産業創出や人材育成などを取り組もうとしています。戦争によって破壊されたインフラや産業基盤を元通りにするのではなく、より環境負荷やエネルギー効率に優れた循環型経済に転換していくことがその目的です。
 
ウクライナのグリーン産業復興プロジェクトに、インデックスグループ企業で、海外でのインフラPPP(Public Private Partnership:官民連携)を手がけるインデックスストラテジーが提案したプロジェクトが採択されました。
 
そのプロジェクトとは、再生可能エネルギーと蓄電池を活用した地域の電力需給の最適化。CSSD(Computational Social System Dynamics)の導入によって、分散型エネルギー社会システムの設計と、エネルギーの地産地消の実現を目指すというプロジェクトです。
 
UNIDOが高く評価したCSSD
ここで挙げたCSSDは、複数のアルゴリズムを適用することで、導入目的に対して再生可能エネルギーと蓄電池の最適な導入量算定できるシステム。東京大学の宮田秀明名誉教授(インデックスグループ・社会システムデザイン前代表取締役、2024年12月9日に逝去)が開発したものです。
 
このCSSDに需要側のデータを入力すると、どこにどれだけの蓄電池を配置すれば、電力供給が最適されるかを計算することができます。区画ごとに必要となる再生可能エネルギーの発電量や蓄電池の容量が分かるため、CSSDのデータを使えば、地域ごとに電力の地産地消が可能になるということです。
 
これからの時代、発電事業者にはカーボンニュートラルの実現や長期的な電力料金の値上げ抑制を念頭に置いた経営合理化が求められます。モビリティの分野を見ても、水素燃料やEVなど複合的なモビリティの活用が当たり前になります。こうした分散型エネルギーを前提とした社会システムの設計やエネルギーの地産地消を実現する上で、CSSDは有力なツールになると考えています。
 
その証拠に、過去にはJR東日本とともに、エネルギーの地産地消とCO2排出をゼロとするゼロエミッションを目指し、「エコステ」のモデル駅として東北本線平泉駅のエネルギーマネジメントを導入しました。また、沖縄県石垣島で太陽光発電・風力発電と二次電池の最適な組み合わせをシミュレーションし、地域電力システムを設計したこともあります。
 
このCSSDを活用し、太陽光や風力などの分散型電源と蓄電池を組み合わせ、ウクライナでのマイクログリッドを実現するというのが私たちの提案でした。今後は約8カ月をかけてフィージビリティスタディ(FS:実現可能性調査)を推進することとなります。
 
宮田先生の技術で戦後復興に貢献していく
とりわけ嬉しいのは、宮田先生が開発したCSSDがUNIDOという権威ある組織に認められたことです。
 
以前の記事でも書きましたが、宮田先生と私は東日本大震災の復興の際に、今回のCSSDと蓄電池、そしてメガソーラーを活用したマイクログリッドの実現を目指していました。この計画は最終的にうまくいきませんでしたが、十数年の時を経て、ウクライナ復興プロジェクトに採択されました。宮田先生は各方面で大きな実績を残して来られた方ですが、その技術や考え方がまた一つ世界に認められたということです。
 
宮田先生は2011年に、「船舶の非線形造波に関する研究」で恩賜賞・日本学士院賞を受賞されましたが、これも20年前には研究成果を出していました。宮田教授がご存命であれば、さぞかし喜ばれたと思います。
 
今回の採択は、あくまでも事業化を目指す上でのフィージビリティスタディです。事業化に向けた仕様設計では、自然環境や電力需要を詳細に分析し、適切な再エネ設備と蓄電池の導入を提案することになります。今回のプロジェクトを通して、ウクライナの対象地のカーボンニュートラルだけでなく、電力料金の適正化や電力経営の透明性向上に寄与し、その先の戦後復興の一翼を担いたいと思っています。
 
【2025年12月25日掲載】
※このレポートは2025年11月27日にLinkedInに掲載したものを一部編集したものになります。

 

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